【小説】屋上での告白

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ねえ、日本人?

そういって嬉しそうに話しかけて来た彼女の日本語は、アクセントが少しおかしかった。

オキナワで生まれて、3歳のときにアメリカに来たの。

お父さんはハワイ出身のマリーンで、お母さんは、ダンスの勉強をしたかったの。お母さんはダンスで有名だったのよ。知ってる?

リサはそういって誇らしげに母親の名前を口にしたが、私は知らなかった。知らない。

でも、リサは傷ついた風でもなく、「美空ひばりとか、宇多田のお母さんと友達なんだよ」といった。

ふうん。

リサはUCLAの学生で、ルームメートを探しているんだといった。私は退屈なトーランスを抜け出して、もっとウェストハリウッドに近い部屋に引っ越したかった。

一緒に住もうよ。リサはなんでもないことのように言って手を伸ばした。

なんか、楽しそうね。私はどこまで相手が本気なのかはかりかねて、曖昧に答えた。まだ会ったばかりの相手だし、仲良くないし。私は自分がレズビアンであることをリサに言ってなかったし。かといって彼女の不器用なフレンドリーさが私は嫌じゃなかった。だから私は、電話番号を渡した。

ワンベッドルームで、1000ドルちょっとの物件があるよ!といってリサが電話をかけてきたのは、翌々日だった。

★ ★ ★

ふ~ん。それで、あなたは彼女には女好きであることを隠して、一緒に住んでるわけだ?

彼女は皮肉っぽくそう言った。

真夜中の階段。部屋の中では話したくなかったから、アパートの非常階段に腰かけて、私は彼女に電話してた。

別に、隠してるわけじゃないけど。聞かれれば言うし、聞かれなかったから、言わなかっただけ。

なるほどね。わかった。

わかったの?わかってくれてるのかな。

わかったわかった。

ふと足下を見ると、小さな小さな、爪の大きさくらいの透明なビニール袋が、何十枚も落ちていた。

…なんだこれ。

何?

いや、何でもない。

電話を切って、自分の部屋に戻ると、リサは出かけたのか、いなかった。

★ ★ ★

リサがリビングルームに住み、私はベッドルームに住んでいた。バスとトイレは共用。

「結構いいところじゃん」シャワーを浴びて来た彼女は声を潜めるようにしていった。

場所がいいよね。場所が。

うん。いいでしょ。

サンタモニカ沿い。ウェストハリウッドまで10分でいけちゃう。

私たちはくすくす笑いながら、キッチンに足を踏み入れる。

リサに、恋人同士であることが、明らかになりすぎないような形で。

ふと、彼女の気配が消えたような気がして、振り返るとカウンターの上をみている。

そこには、透明な袋が何枚か散乱していた。まるで、切手を4つに切ったくらいの小さな袋だ。どこかでみたことある、と思う間もなく、彼女がジュースちょうだいというので、コップを手渡した。

★ ★ ★

きっかけは何だったのかわからない。

リサと彼女がいつのまにか友達になっていた。

ちょっと屋上に行って来る。

そういって2人は消えた。

私は言いようのない不安にかられる。

うちらはうまくいってる。

昨晩も、彼女とこの部屋で裸で抱き合って眠った。

リサはレズビアンですらない。

(たぶん)

でも、なんなんだろうこの気持ちは。

悲しさ?
疎外感?
嫉妬?

違う。
何がおこっているのかわからない、という感覚。

私は気づかないうちに、階段を上って、屋上に出ていた。

リサは、出会った時とちっとも変わらない不器用さと率直さでこちらをみた。

何?

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-了-
追記:少し説明不足の感もあるので、あとで書き直すかもしれません。ビニール袋というのは、具体的な意味もあるのですが、象徴的には、周りの皆にとっては意味をなしているのに、自分だけが理解できないものを表しています。
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comment

んー、なんかおもろい。
続き、気になります。
  • 2009/03/28
  • すぬぴ
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