【レビュー】『モザイク』あるいは、田口ランディと桜井亜美に共通するプロフェッショナルな嘘くささ

日本の本をまとめて買ってきたんで読む。

田口ランディ『モザイク』



はっきりいってつまらなかった。

うんちくが多すぎて物語が弱い。

ま、少し古い本だからというのもあるが「渋谷の底が抜ける」とか「まったり~」とか、「新興宗教」とか「電磁波」とか「サカキバラ」とか…中途半端に時事ネタがはいっていて、しかもそれが表層をなぞってるだけなので、非常に薄っぺらい印象を受ける。なんだなんだ?宮台真司でもかじったのかあ?と思ったら、本当に宮台と速水の共著『サイファ覚醒せよ!』が参考文献として挙げられていたので笑った。わかりやすいなあ…っていうか、素直なのか。


ただ、ラストに近いシーンで、主人公が幽体離脱するところ。そこだけはよかった。こういう、脳みそがぱーっと開くような感覚を与えてくれる文章は好きだ。もっとこういう瞬間を多く与えてくれる小説を書いてほしいね。

田口ランディ本はアンテナ、コンセント、他にも何冊か読んだことあるが、好きじゃなかった。決して、面白くないわけではないのだが、なんとなく、信じられないというか。盗作を知ってからははっきり、「こいつ信用できない」になったが、盗作を知る前から、なんとなく嘘くさいと思っていた。



大事なことなのでもう一度書きます。

田口ランディは、盗作うんぬん抜きにしても、何か嘘くささが漂っている。

なーんていうかさーうさんくさいんだよ。

私は彼女の文章自体は、実は結構好き。文章が変な確信に満ちていて、文章を読むこと自体は気持ちいいのだが、全体としては「だから?」っていうのが多すぎる。

一見口当たりがよいのでどんどん食べられるけど、体に悪い人工添加物だらけの原色のゼリーとか、ジャンクフードみたい。あと文章の中で、うんちくの占める割合が多すぎて、ストーリーが結構陳腐なんだよな。

一時期、女子高生の代弁者的な感じで持ち上げられた桜井亜美の小説群と似ている。

桜井亜美の小説は初めからすげー嘘くさかった。桜井亜美の正体が、当時「テレクラ&援交女子高生の気持ちがわかる社会学者」として脚光を浴びていた宮台真司の事実婚の妻であったジャーナリスト速水由起子だった!ってことが分かる前から、嘘くさいと感じてた。

大事なことなのでもう一度書きます。

桜井亜美の小説は、本当は女子高生作家が体験をもとに書いたのでもなんでもなく、ジャーナリストが取材を元に書いた小説だとかいうこととは関係なく、嘘くさい。



彼女がいかにも「女子高生作家、デビュー!」みたいなパッケージで売り出されて、書店にカラフルな表紙がいくつも平積みされた時。本が好きだった私は当然それを読んだけど、なんだかどうしようもなく嘘くさかった。

大人からしたら、わかりやすい“女子高生のリアルを切り取った!”だったのかもしれないが、本当に女子高生だった私、その時、まさに、渋谷のセンター街で遊んだり、プリクラ撮ったり、友達とピッチでテレクラやったり、メル友なんかもいた女子高生だった私にはまったくリアルではなかった。

(ちなみに、私はまさにコギャル世代で、ルーズソックス→ハイソックス、ポケベル→ピッチ、メル友、テレクラ、援助交際、安室、SPEED、ミスチル…なんかをリアルタイムで浴びながら思春期を渋谷や新宿ですごした)←同世代の人だとわかるでしょうな!

とはいえ、とはいえ、結構校則が厳しい進学校でしたので他校の子と放課後繁華街の路上でつるむっていうことはなかったし、パーティとかドラッグとかもやったことはありませんでした。男子校の文化祭で知り合った彼氏とかは何人かいましたが。セックスはしたことなかったし。

ま、だから、いくらミスチルのタイトルみたいな「女子高生作家」の作品であっても、「ウリやってる」みたいな女子高生が出て来るストーリーに対して共感できなかったのかもしれないが、でもそういうんじゃないんですよね。自分と境遇が違う小説でもすごいものはすごいんだから。桜井亜美のは、とにかく、小説としてチープだった。ペラペラ。表紙の写真もあとがきも、あとからあとからでてくるいろんなカタカナ言葉、シンクロとか、インストールとか、アンテナ、とかそういうのが全部嘘くさく思えた。

文章力も、着眼点も、マーケティングも、悪くないのに、なんか、嘘くせー!!なんとなく「らしい」パッケージをこしらえて、セルアウト、お前、時代から、半歩遅れて、一生懸命ついてきているだけやんけ!(ちなみに、「常に時代に半歩遅れている」と言われていたのは村上龍)

ま、そんなわけで、私は「女子高生の気持ちを代弁」みたいな桜井亜美が嫌いだったのですが、彼女の作品に対して感じるのと似た「信用できなさ」を田口ランディの作品に対しては感じます。

そしてはからずも、二人とも作品から匂いたつ「信用できなさ」を「盗作」あるいは「アイデンティティの秘匿」という形で担保してしまっている。

田口さんとか速水さんに対してもう少し優しげな言い方をするなら、二人は、プロフェッショナルのライターや編集者っぽすぎるのかもしれない。取材したり勉強したものをこぎれいにまとめて、少しだけ自分の文体と洞察で味付けして、「はい」ってそれらしく、作品にまとめることはできるのかもしれない。それはライターとしては優秀な素質といえるのかもしれない。けど、なんかそれって、すげー、リアルじゃねー。量産されるノウハウ本とか、ハーレクインロマンスの小説みたい。まあ、一杯売れて、商業的にはそれで成功するだろうから、作者としてはうはうはだろうけどね。

村上春樹も、ある時からそういう作品(取材で得た莫大な資料を春樹文体で出す、みたいな作品)を書くようになってきて、物語自体の力が弱くなってきた。私は昔の村上春樹が好きだったので、実はとってもそれが哀しい。(エルサレム賞受賞のスピーチはよかった)

ちなみに取材をしたり、元ネタがあっても、出来上がった作品がすげーっていうものはある。例えば、桐野 夏生の『グロテスク』



東電OL殺人事件にインスパイアされたというこの小説は、中華系移民、オウム真理教、そして私立学校内部でのヒエラルキー争い(←私にとってはこれは非常にリアルでした)など、現実世界の材料をがんがんいれながらも、全体としては、まったくオリジナルな創作物となっている。これはすげー小説。

最近、グロテスクと佐野眞一の『東電OL殺人事件』も読んだのでそれは改めてレビューします。

というわけで、なんか久しぶりに読んだのに、文句ばっかり出てきてしまったな。

私の好きな作家を書いておこう。

村上春樹、大江健三郎、松本清張、江戸川乱歩、横溝正史、東野圭吾、眉村卓、桐野夏生、重松 清、安部公房、井上靖、小川未明、新見南吉、貴志祐介、桐野夏生、夏目漱石、太宰治、嶽本野ばら、灰谷健次郎、星新一、三浦綾子、森瑤子、山岡荘八、山田詠美、車谷長吉、石田衣良、辻仁成、林真理子、宮部みゆき…。アーヴィング、サリンジャー、カポーティ。

で、売れてるし、私もよく読んでるし、才能があるのかもしれないが、実はそんなに好きではない作家もいます。

その代表が、江國香織、よしもとばななです。すごーく人気なのですが、私はあわない。基本的に私は「みずみずしい感性」とか評される小説はどうもあわないみたいです。冷たくて甘いゼリーみたいな小説よりも、ビーフジャーキーのような小説が好きなのですな。

あと売れてるっぽいけどそんなに好きじゃないのは、村上龍(『ただし、コインロッカー・ベイビーズ』と『限りなく透明に近いブルー』は、大好き!)

彼の本は出来にムラがある。小説として面白い!と思えるのが少ない…。短編集読みましたし、イビサ、とか希望の国の…とか、超伝導ナイトクラブとか、結構読んだけど全然面白くないんです。上で初期の2作で才能が枯渇したのでしょうか?あ、あと忘れてた69 sixty nine。これは好き。僕らの7日間戦争みたいな感じで。あれは好き。愛と幻想のファシズムは妹が大好きって言ってますが、私は読みかけたけど最後まで読んでません。面白いのかな?

柳美里あたりも、結構読みましたが、あまり好きではありません。川上弘美は、少し読んだだけで、多分大好きにはならないような気がします。が、もう少し読んでみたい。

小川洋子はわりかし好きで結構読んでいるが、実は少し物足りない。あのう…奥手な少女の処女っぽさというか、理系男子のインポぽっさというか、どっちもでもいいんですが。あのセックスフォビアっぽい清潔な雰囲気が、なんともいえずカユくなる。もう少し前に(高校とか、大学時代とかに)出会っていたらもっと好きになったかもしれない。

ていうか、学生時代はめっちゃ小説とかいろんな本読んでたけど、社会人になってからは、ビジネス書とか、仕事の本ばっかりで、小説を読む暇はあまりないんだよね。読むとしても、分かりやすく、読みやすいやつになってしまう。難解な小説を読みたいとはあまり思えない。

でも、分かりやすくてオススメの小説あったら教えて下さい。
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  • 2009/05/10
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  • 2009/05/10
こんにちは。

>田口さんとか速水さん…プロフェッショナルのライターや編集者っぽすぎるのかもしれない。
↑その通りだ!と何度もうなずいています。田口さんは、エッセイとかコラムの方が印象的な気がします。そこら辺も、そういうことなのかもしれません。

「グロテスク」、わたしも一気読みした小説です。桐野夏生さんの小説は、おしなべて面白くて好きです。ただし、人間の狡さや弱さみたいなものが容赦なく描かれているので、読みながら苦しくなることもあるのですが……。

翻訳モノですが、エテキサス東部(ディープサウスの端っこ?)を舞台にした、「ハップ&レナードシリーズ」(「バッドチリ」とか。ジョー・R. ランズデール作)も、ハマって一気読みした作品です。翻訳モノって、翻訳者のセンスに左右される部分があるかと思うのですが、わたしには合ってました……下品とかエゲツないなどとも言われているようですけども。
……すでにご存知だったらすみません!
はじめまして。
以下、読みようによっては嫌味っぽいかもですが、他意はなく褒めことばです。と先に言っておきます。

書評って芸が要求される文章で、私は定評ある書評ブログも書き手さんの芸を楽しみに見てるタチなのですが。
このエントリはシンプルで鋭い素人読書好きの感想として出色だと感じました。つか、こーゆー文章書きたいと思った。

個人的に、村上・桜井系の作品と百合萌え801萌えのゲイ論に同じ臭いを感じます。マーケティング臭なのか対岸の火事の焦げ臭さなのか。
私はブログ主さんと同世代でクィア(バイセクシュアルと自称することが多いですが)だけども、彼らの作品の臭いに敏感なのが個人的背景によるものなのか「半歩遅れ」のダサさが気になるだけなのか、どっちかなーと思いました。

オススメ小説ですが、現代純文学モノはちっとも難解じゃないし、笑えるのがありますよ。日本なら高橋源一郎、小林恭二、笙野頼子とか。英語圏だとポール・ラドニックとかニコルソン・ベイカーあたりが好きです。
  • 2009/05/10
  • unikov
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遅ればせながら。
加納朋子「ガラスの麒麟」http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2648865
とかいかがでしょうか?古い作品だし、もう読まれたかな。
その他の作品は結構ファンタジックでガーリッシュな雰囲気があるのですが、この作品は割と女性ならではの「女」の欲望的なものが描かれていて、個人的には好きです。連作短編集なのでサクサク読めるし。

私も「グロテスク」は、圧倒されました。ので佐野眞一の『東電OL殺人事件』もずっと興味あったんですが、そっか、あんまりなんだ…。
最近、ちょっと読書熱が落ちていたので、こうやって書評を読むのって参考になって面白い!小川洋子が全く読んだことがなかったんだけど、逆に「奥手な少女の処女っぽさ」を読んでみたくなりましたw
  • 2009/05/17
  • おと。
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はじめまして
サラ・ウォーターズさんはお好きではありませんでしょうか?『荊の城』は翻訳家のキャラ設定がわたしにはとてもツボだったので、読み終わった後「面白かった~!」と声がでました。原書で読むと、また違うのかもしれないです。
あと、わたしは江國香織さんの文章がとても好きなので、よしもとばななや江國香織が私のボートの側で溺れていたら、浮き輪を投げるくらいしかしないと思う。のところで、浮き輪投げてくれるんだ、よかった、と安堵しました。
江國さんは『男に生まれ変るとしたら、男色家になりたい』と言われるほど男好き(?!)なので、女好きなわたしにとっては、いまひとつ満たされない感はあるのですが、『号泣する準備はできていた』)に、女性カップルを描いた短編「熱帯夜」があります。その文章の中の〝人は一所にとどまっていられない-愛においてさえ〟と〝男も女も、犬も子供もいる世界の片隅で〟という文は、よくふと思い出します。
女性カップルの話はありませんが、『つめたいよるに』という初期の短編集はお薦めです。その中の「朱塗りの三段重」などは年末年始のころや、犬好きの人には、読んでみて、と家に来た人によく押しつけてます。
投稿遡ったコメントで、失礼お赦しください。
  • 2009/05/19
  • りらん
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  • 2010/01/26
井伏鱒二の「山椒魚」とか横光利一の「春は馬車に乗って」とかどうでしょう。
時事ネタを扱うこととリアリティがあることは全く別な気がします。現実的じゃないけどリアリティのある安部公房とか私も好きです
  • 2010/05/09
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