誰かの実存を持ち出してその人の発言や思想を批判するのは卑怯である

その人のあり方というものは、確かに、その人の思想と切り離し難く結びついている。だから、私が日本で生まれ育ち、女性として育てられ、そしてレズビアンとしての経験を持っていることが、私の考えに少なからず影響を及ぼしているのは事実だろう。
だが、私がネットで何か発言している時…特に、批評的なこととか、ある程度真面目なことについて発言している時、それを「レズだから、こういう発言してるんだろ」(もっと詳しく言うと、「レズだから男性フォビアなんだろう」とか「レズだから、社会に対して抑圧的な感情を持っているに違いない」)みたいな文脈で、私のレズビアンという実存に話をずらされたり、レズビアンというセクシャリティと絡めて自分の発言が歪んで伝わっているように感じると、なんだかなあ…って無力感を感じる。

そういう個人の属性や実存が、その人の思想と切り離せないのは事実だけど、批評なり、議論なり、言葉というツールを使ってコミュニケーションを取っている時に、実存を持ち出されると、そこまで言葉をつかってつみあげてきた、議論が骨抜きになってしまう。卑怯な戦略だと思いますね。必死で議論をつみあげたあげくの最後に「でもさ、お前、ハゲじゃん」って言っちゃうようなもんで。(ここに入るのは「ハゲ」でも「モテない」でも「ブス」でも「チビ」いいんだけど)(例え、その時のトピックが頭髪やモテについてであったとしても、ロジックと関係ないところで、相手の実存に関する事象を持ち出すのは不適切だと思う)

これを感じたのは、以前の「異性愛者へ12の質問」騒動の時に、

ある一人のヘテロに、「ヘテロな世間」に対する淀んだ感情をぶつけて悔いないクソレズ

http://h.hatena.ne.jp/spectre_55/9234280225496872864


という言葉をかけられた時でした。

「ああ~、人様からからみたら、この構図は「レズvsヘテロ」みたいな感じになっちゃうのね」ということが学べたことは非常に有益で、それはそれでよかったのですが、やはりかなりショックはあったよね。

その時の私の議論の進め方として、確かに私はヘテロセクシズムに対して異論を訴えていたし、その矛先の一つがヘテロ男性だったことは事実なんだけど、実際、その場において、他にも存在したヘテロと自認している男性に対しては別にかみついていなかったし、私は別にレズビアンとして発言していたつもりはなかった。

確かに話題はセクシャリティに関係があった。が、私は自分がゲイであっても、ノンケであっても、意味の通じる言葉を発していたつもりだった(あくまでつもり)。 

なので、そこで突然「クソレズ」という言葉がでてきたことには驚いた。もし私の発言や議論の内容に「レズビアンであることに起因する偏り」があるのであれば、その偏りを冷静に指摘してほしいと思ったが、それがなされず「クソレズ」という私自身のありかたに対する言葉だけが投げかけられたことに困惑したし落胆した。

12の質問の時にかぎらず、私は議論の際には、発言者の実存(アイデンティティや、モテる、モテない、ブサイクなどのレッテル)に注目して立場を変えること…例えば、その人はゲイで味方なので、同意するとか、ヘテロだから理解しあえないとか、同意しないとか…はあまりない。

セクシャリティなど個人的なトピックや、当事者性が強く問われるトピックにおいては、発言者の経験を頭の片隅においた上で、相手の発言を解釈するけど、通常、相手の属性とか実存をもちだして、安易に相手の言説への賛同の理由としたり、批判の根拠とはしないわけです。

マジョリティーでもわかってくれる人はわかってくれるし、自分と同じカテゴリにはいるような当事者でも、彼らが抑圧的とか差別的だと思ったら、批判するようにしている。

で、相手もそういう態度で議論してくれることを無意識で求めていたのですが、結構そういうわけにはいかないんだなあ…ってことを最近しみじみ痛感してます。

まあ、それをしてくれない相手を責めたいわけではなく、それが現実なので、なかばあきらめとともに受け入れていますが…私が何か言うと常に「レズがなんか言ってる」みたいなことになっちゃうんだな。それはそれでいいんだけど、たまに、「私がレズだろうがなんだろうが、私の言ってることに関係ないだろ~がよ。そーゆー要素を持ち出して批判しないでくれ!」と全力で訴える必要がたまにでてくる(ここでの「レズ」は、「女」「アジア人」「非モテ」「ブス」などにも入れ替え可能)。

で、なんでこういうことを今書いたかというのには理由があります。
(長くなるので以下は別エントリに致します)
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not objection
 下記のURLにて記したコメントを転載します。
 http://h.hatena.ne.jp/Siesta/9234087552124020663
 
 そもそも異性愛者へ12の質問においては、先にあなたこそが回答者の発言をヘテロという実存と結びつけながら逐一吟味しては場合によっては批判までしていたはずです。
 しかもあなたは、「このヘテロ男性!」という発話は「このゲイ!」「このレズ!」という発話よりも暴力性が低い、もしくはほとんどない、と主張してはばかりませんでした。あのときの自己正当化がどれだけあなたに対する抗議をヒートアップさせることになったか、いまあなたは考えておられるでしょうか。あの場での議論や対話というものがあなたの望むようにならなかった原因のひとつには、明らかにそのこともあるはずです(少なくとも私があなたとあなたの望むような対話を行えなかったのは確実にそれが原因です)。
 あなたは異性愛主義からの抑圧を感じているそうですが、そのあなたが異性愛者をおしなべて異性愛主義に結びつけて抑圧していったことの結果が、あなたに向けられたあのヘイトスピーチのかたちをとって、あなたに対する新たな抑圧となったのです。これは私のテーゼですが、他者に復讐しようとする者ははじめから自らに復讐されています。この復讐の鎖を絶たなければならないのであって、むしろそれこそが、あなたがそもそも目標としていたことではなかったのですか。もしもそれを目標としていなかったとおっしゃるのであれば、私はこれからもあなたとは決して相容れない立場にたつことになるでしょう。しかし、それを最終的な目標としていたとおっしゃるのであれば、私はあなたの発言をささいなミスとして受け止め、まずはこの問題をともに考えていくための準備をひとりでしながら、あなたのこれからの活動に賭けましょう。
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