ゲイは新しい黒人ではない

最近オバマ大統領の動きに対し、いくつかのGLBT団体はいらだちを表明してきた。DADTやDOMAを巡る動きが遅く、選挙期間中の公約と異なるというのである。(参考記事1

だが、そのようにオバマを批判することは結果的にゲイリブにとって得策ではないのでは?という指摘が出ている。黒人ゲイコミュニティ内部にはGLBT団体がオバマを批判しすぎていると感じている人がいる。LZ GrandersonがCNNに寄せた記事を紹介する。


Gay is not the new black

レインボーフラッグや、Lady Gagaの音楽(もっとはっきり言うと白人の音楽!)から遠く離れたイリノイ州シカゴ郊外のWicker ParkにThe Prop Houseというナイトクラブがある。

入場の為には行列ができ、BoystownやAndersonvilleのクラブとは違い、ここではヒップホップが流れる。バーテンはゲイもノンケもいるだろうが、どちらにしろ彼らは誇りある黒人である。

そして、彼らの多くは、「ゲイコミュニティはオバマに失望している」という話を聞くのにうんざりしている。なぜなら、彼らはオバマに失望などしていないのだから。

ここ何週間か、この国の初の黒人大統領は、国一番のホモ嫌いであるかのような印象を作られたかもしれない。オスカー受賞者のDustin Lance Blackから、ラジオホストのRachel Maddow、アメリカ最大のゲイ権利団体HRCプレジデントのJoe Solmonneseまで、みんながオバマを全てにおいて責めているようだ。"don't ask, don't tell"ポリシーについてから、アダムランバート(人気TV番組アメリカンアイドルに出演していたアイドル。先日ゲイだとカムアウト)が勝ち残っていないことまでね。

だが、オバマとGLTBコミュニティについての批判というのは、冒頭で述べたバーThe Prop Houseに入るための行列に並んでいるような人からはほとんど聞こえてこないはずだ。それには理由がある。

「ゲイは新たな黒人だ」このスローガンはキャッチーだが、実際にはゲイは新しい黒人ではない。

黒人は未だ黒人である。

そして、そのことを一番よく知っているのは、他でもない黒人コミュニティである。

黒人であり、黒人とデートし、そして黒人コミュニティに住んでいる黒人は、自分が大きなゲイムーブメントの一部であるとは感じない。シカゴのThe Prop Houseとかジョージア州アトランタのBulldogsみたいなバーが存在するのはそのためだ。ゲイプライドフェスティバルが存在するのと同様「ブラックゲイプライド」が存在するのもそのためだ。

首都にあるとある人気のバーは、名前をAntebellum(公民権以前)に変えようとしている。なぜなら白人の常連客は皆二階に留まり、黒人常連客はいっつも一階に留まるからとしているからだ。(※黒人と白人の利用する施設が分けられていた時代のようだ!)

それに、去年、DCで行われたHRCの全国資金集めイベントは、3時間以上にも渡る大規模なものだったが、そこでステージに上がった唯一の黒人は、エンターテイナーだった。

カリフォルニアでProp 8が通ったとき、白人は、すぐ黒人コミュニティのせいだと責めた。実際には、トータルの票数でいうと、YESに投票した人の中で黒人の割合は10%にすぎず、白人が60%近かったというのにね。

抗議マーチにおいては、白人から人種差別的な言葉を投げかけられ殴られた黒人もいる。細かいことかもしれないけど、黒人に取ってNワード(nigger:黒人に対する侮蔑語)は、Fワード(fuck:英語において最も悪い侮蔑の言葉とされる)よりを上回る侮辱だ。

というわけで、白人のゲイ代表とやらが、頭がかたく偏狭な宗教右派をせっせとブログやテレビで攻撃している間、黒人や他の少数派はその身内にも恥部があるっていうことを、ちゃんと見ている。公式には「統一」の名の元に抗議マーチをするけど、実際にはお互い全然離れた地区に住んでいるということの偽善を黒人は見てるし、それは今にはじまったことじゃない。

(ゲイリベレーションの幕開けと言われる)ストーンウォール暴動から40年たったという記念式典があちこちで行われていて、それは確かに記念すべき重要なことではあるんだけれども、40年間というのは、この国で、黒人が闘い続けた血まみれの400年間に比べたら、なんてことない。生き延びた黒人のストーリーがある。両親から子供へと語り継がれるストーリーがある。そして、一度も語り継がれないままのストーリーもある。

40年前、ゲイたちは、ストーンウォールバーで警察に逮捕されるんじゃないかと恐れたという話だが、同じ40年前、黒人たちは、警察に殺されて、死体も見つからず、殺人事件が捜査もされないという自体を恐れていた。1865年に、アメリカ合衆国憲法修正第13条が成立し、奴隷制は廃止された。その後80年以上が経って、1948年にやっと、人種別だった軍隊が統一化された。

ビル・クリントン時代に生まれた「Don't Ask, Don't Tell」より、マイリー・サイラス(※ティーンアイドル。日本で言うとBerryz工房みたいなもんか!?)の方が年上なんだ。別に、ゲイの人々の安全を過小評価するべきだとは言ってないし、オバマが選挙期間中に約束したことに対して責任がないわけでもない。ただ、今月ホワイトハウスへのGLBTリーダーの発の招待を「遅すぎるし、あまりにもわずかである」などと批判するのは、拗ねた子供が「ご飯より先にデザート食べたい!」とかんしゃくを起こしているようなもんだ。

これが、多くの黒人がゲイムーブメントとブラックムーブメントを比較されるとイライラする大きな理由の一つだ。 "Everybody wants to sing my blues , Nobody wants to live my blues"「誰もが俺のブルースを歌いたがるけど、俺の憂鬱(ブルース)を生きたい奴はいない」

GLBT団体が、バランスよく状況を見れないとしたら、オバマのことを今でも非常に誇りに思っていて、オバマに対する批判にとても敏感になっている黒人コミュニティを遠ざけてしまうことになるだろう。オバマはなんといってもまだ政権の座について六ヶ月しか経っていないのだ。

もしも仮に、黒人が他の人種よりも、ゲイを受け入れていないのだとしたら --本当にそうかどうかはさておき--ゲイの人々が「オバマにはがっかりだ!」と叫びながらパレードしたりするのは、黒人にゲイを受け入れさせるのに逆効果であるということは言っておこう。それに、オバマを最も激しく攻撃するのは白人であるという事実もまた、黒人がゲイを受け入れる助けにはならない。

ゲイコミュニティ内の人種の話についての話を不愉快に思う人も多いかもしれない。でも、不愉快だからと耳を塞いでも、その事実が存在しなくなるわけではない。



というわけで、あまりに性急にオバマを批判するのはゲイリブにとって得策ではないかもですよ、という指摘ですね。特に白人男性が、ゲイ代表!みたいな顔して、「オバマはゲイの権利に本気じゃない!」みたいな批判をガンガンすると、もっと広い支持を失う可能性があると。

カリフォルニアでは去年のProp 8の敗北の大きな理由の一つとして、民族的少数派などを巻き込みきれなかったという反省が出てきているのだが、今後全米において同性婚を巡る論争が広がって行くことが予想されるなか、メインのゲイリブは、今こういう有色人種や他のマイノリティの声に耳を傾け、幅広い層を取り込めるストラテジーを考えるべきですね。

★ ★ ★

ちなみにゲイムーブメントと黒人ムーブメントを比較した記事は何もこれがはじめてではなく、これまでにも多く出ている。「XX is the new black」という言い回しは、もともとは、「いきなりオシャレになった流行もの」という意味があり、Queer as folkの中でも「Gay is the new black」といセリフが「ゲイが今流行ってる」という意味で使われている。が、Prop 8以降は、ゲイには婚姻という権利が認められていないということで、ゲイは未だに公民権を否定されているセグメント=かつては黒人がその象徴だったが、今はそれがゲイだという意味で唱えられるようになったもの。

「ゲイは新しい黒人」というスローガンへの反論として主なものは、黒人からの人種差別は解決した過去の問題ではなく、またゲイムーブメントは黒人公民権運動とは規模も深刻さも違うという「黒人差別を過小評価するな」という立場のものからです。これが最も本質的であると思います。また「肌の色は隠しようがないが、ゲイであることは黙っていればわからない=ゲイリブにおいては黒人リブには問題にならなかった「カミングアウト」が大きなトピックとなって来る」という点を強調する人もいます。

以下にいくつか挙げておくので興味がある方は読んでみてください。

Gay Is the New Black?[ADOVOCATE]

No-on-8's white bias[LA Times] -Jasmyne A. Cannick


Gay Is The New Black![Perez Hilton TV] - Tyra Banks Show動画


Gay is the new black[The Guardian] -Gary Younge


Prejudice Study Finds Gay Is The New Black[British Psychological Society ]


Is gay the new black? Debate from marriage ban[AP]

同性愛に比較的寛容な黒人社会が、選挙では同性愛者の権利に反対する理由 -macska

私自身は人種問題については非常に無知ですが、ゲイの問題と人種の問題を安易に重ね合わせるべきではないという議論は理解します。「ゲイのおかれた問題と、黒人がおかれてきた状況とは比べ物にならない」と黒人が主張するとき、アメリカにおける黒人人種差別の実体と公民権運動の歴史について無知は私は、ただ口をつぐんで耳を傾けるしかない。

ですがゲイが活動をすすめるとき、「先輩」である黒人のコミュニティやアクティビズムを意識しそこから何かを学んだり勇気づけられるということ自体はまったく自然な行為だと思うし、比較してしまうのも素朴な感覚としては非常に理解できる。ちなみに最近カリフォルニアで大麻合法化の動きが非常に活発だが、大麻アクティビストの中には「同性婚ムーブメント」をお手本にしていると発言している人がいる。それぞれの活動には、それぞれの異なる固有の問題があり、おかれた状況も違うため一概に一般かはできないが、それぞれの活動は、必ず何かの類似点があり、一つの活動の達成/あるいは失敗から他の活動は何かを学べるはずだと思う。

例えば、法律上の平等を手に入れた後、黒人コミュニティや権利団体の存在意義がなくなったわけではない。彼らは今何に力を入れているのか?法律上の平等(形式的な平等)を手に入れた後も残る、人種プロファイリングに代表される人々の偏見、学校からのドロップアウト率のギャップ、平均収入の差などの、失業率の差…。

それらの問題のいくつかは(そのままの形でないにしても)おそらく将来のゲイコミュニティの課題となってくるだろうし、ゲイコミュニティはこれらの課題について、黒人コミュニティを初めとする他の活動から学ぶことができるだろう。
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