現代アートの人気者Banksy大先生を崇めることの矛盾と滑稽さ

グラフィティは多くの都市において犯罪であり、逮捕されることもある。

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通常はグラフィティ禁止のエリアに描かれたBanksyのグラフィティが、住民投票によって保存されることが決定したが、その後、他のタガー(グラフィティ・ライター)がBanksyのグラフィティの上に落書きをしてしまったというニュースを今日読んだ。(参考記事

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この件を皆さんはどう思うだろうか。

「せっかくのBanksyのアートを、落書きで汚しやがって!もったいない!」?

うん。気持ちはわかる。もったいない。つか残念。ライターたちが仮にもアーティストであるなら、Banksyの作品に対して敬意を払うべきだったというのはわからないでもない。結果的に美観的にはアレだし、センスが悪いと思う。が、私はどこかで、「はは!やるならもっとやれよ!」って思っちゃった。どうせならもっとカッコいいコラボレーションとかにしてほしかったけど。だが、そのうえで、なんとなく「ざまぁ!」というか、小気味よいものを感じた。

というのは、私は、Banksyに上書きしたタガーたちの行動よりも、Banksyが有名になったから、オーケー、じゃあうちらはBanksy大先生のグラフィティを保存します、あわよくば観光名所にしちゃえ♪みたいな姿勢に対して、より警戒心を覚えるからだ。今回の壁画保存投票は、地域住民によるものであり、決して企業の利益になるものではなかったが、雰囲気としては、2010年オープン予定の渋谷のNIKEパーク、もしくは、2005年にSONYがPSPのために行い、こてんぱんにバッシングされたグラフィティ・マーケティングの気持ち悪さにも通じるかもしれない。今回の件がダイレクトにそうだったとは言わない。が、アンチ・エスタブリッシュメントのムーブメントすらも取り込み、利用しようとする資本主義や権威の動きには唾棄すべきものを覚える。

Banksyの作品は、アンジェリーナ・ジョリーなどのセレブたちに高額で購入されるなど、既に世界的な人気と知名度を獲得している。展覧会が開かれ、美術館のオフィシャルコレクションにも作品が収蔵され、アート界においてエスタブリッシュメントと化していると言っていい。

それ自体が一種の矛盾なのだ。

念のためはっきり言っておくと、私はBanksyかっこいいと思うし超好きだ。尊敬している。Banksyの作品が街から消されないでほしいと思っている。だから基本的にはBanksyの作品を保護するという姿勢には賛成。あと今回のように汚い上書きがされればがっかりする。それは事実。

だが、本来はストリート出身のBanksyのスピリットを理解しようとせずに、「Banksyが描いたから」というので、ありがたがって大枚はたいて彼の作品を買って豪邸のリビングルームに飾り、大富豪のお友達たちとウィスキーのグラス片手に「ほお…なかなか…」と言ったり、他のストリート・アートへの理解はないままに、一般的なグラフィティには眉をひそめて、せっせと消すくせに、Banksyの作品は単にそれがBanksyだからという理由だけでありがたがって保護するというのは、滑稽でしかたない。過去には、ロンドンの落書き対策チームがBanksyの作品を誤って消してしまったという「事件」もあった。「落書き対策チーム」にとってBanksyの作品と落書きとの見分けがつかなかったというのは象徴的であって、それはそもそもBanksyのアートのルーツは「落書き」だから。Banksyがここまでクールな理由の一つは、それがストリートにゲリラ的に描く「落書き」だから。ある意味インスタレーション・アートなのだ。そして、彼のアートに含まれるメッセージは、政治的であり、非常に痛烈な資本主義、エスタブリッシュメントに対する批判。彼のアートの存在自体が、権力に対する抵抗である。

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Banksyの作品は、美術館に飾られているからスゴいのではない!
Banksyの作品は、有名だからスゴいわけではない!
Banksyの作品は、何千万円という高額で落札されるからスゴいわけではない!

Banksyはそもそもそれらのエスタブリッシュメントな評価基準に明確に「ノー」と言っているのだから。

Banksyの作品を大枚はたいて買って大層に美術館に飾ったり、Banksyのデザインを使って金儲けをしたり、彼が有名になったからという理由だけで彼のグラフィティを保存しようとするのは(Banksyの作品は普通にクールなので、気持ちは分かるし、その欲望自体は決して否定しないが…)、非常に矛盾をはらんだ行為だということを常に自覚するべきである。その矛盾を意識せず、「世間・美術界・エスタブリッシュメントの評価」に裏打ちされていることを理由に「Banksy大先生」の作品をただありがたがって所有したがったり保存したがるのは単にポン助だとしか言いようがない。

These galleries are just trophy cabinets for a handful of millionaires. The public never has any real say in what art they see.

-Banksy

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