新宿二丁目、午前三時

新宿二丁目、午前三時。

老舗のバー、Queensのカウンターで隣に座った子はひっきりなしに何かをしゃべっている。
私は頷きながら微笑んでいる。
別に可愛いと思ったわけでもないし、向こうも私が気に入っているわけではないだろう。
終電が終わり、どんどん人がいなくなる中、お互い一人きりだった二人は、孤独を舐めあうために、目をあわせて乾杯した。

彼女とは多分、前にも何度か顔をあわせたことがある。
名前はキンコちゃんだったかな。
それともクンコちゃんだったかな。

あれは神社の境内だったか?
それとも、クラブの前のコンビニの列で?

会う度にさぞ友達かのように手をあげて挨拶するけど、私は彼女のことを何も知らない。
彼女も私のことを何も知らない。

いつも彼女はひとりきり。
もっともそれはお互い様。
彼女からみれば私こそ「いつも一人でいる」側の人間だろうし。
私たちは二人とも一人きり。
でもたまたまバーのカウンターで顔を合わせた今は、まるで私たちは「二人」みたい。

彼女の背中にはびっしりうぶ毛が生えている。
ニキビの赤ちゃんみたいな細かいぶつぶつだらけ。
それとも、これは、鳥肌?
彼女は寒いんだろうか。
私は彼女のキャミソールをはぎとり、背中を泡立てたたわしでごしごし擦りたくなる。

私がこんな想像をしていることを彼女は思いもつかないだろう。
彼女は自分が飲んでいる薬の名前を並べ立てている。
そして、私が退屈しているのを感じたかのように、ふと深刻そうに黙り込む。

「アタシって弱い人間なの」

…。そう。私もそうだよ。薬、一粒くれ。
ぼんやりした頭の表面で考えながら、朝が来るのを待っていた。

その時、入り口の方が想像しくなり、女の子二人組がはいってきた。
こんな時間に新しい子がはいってくるなんて、珍しい。
振り向くと、彼女がいた。

img20061101_t.jpg


ぬぉ。
かわいいやんけ。


シェーンみたいな帽子をかぶっているけど、ロングヘアーでかっこいい。
カップルか!?
彼女は自分が注目を浴びていることを充分に意識した口調で店内に向かって言いはなった。

「こんばんわ、皆さーん!私と一緒にショットする人、いない?」

何、この変な女!

私は、急に眠気が吹き飛ぶような気がして、隣のキンコを肘でつついた。いや、クンコだったかな?面白い子が来たじゃん、と目で話しかけると、彼女もその子たちのことをじろじろ見て悪くないじゃん、と答える。

よし。私は手をあげた。

「オーケー」

彼女は私に目をあてた。

「よっし、じゃあ、パトロン、みっつ。これは私がおごり。そのかわり次はおごってね」

私とキンコと、その謎の女は三人で、ショットグラスを飲み干した。

(つづく)
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comment

No title
こ、この写真は!ふふ。 続きを楽しみにしています。「押して押して押し倒されろ」は素晴らしいタイトルだと思っていました。とてもすきでした。雰囲気がガラッと変わって新しいお店に入ってきょろきょろしてしまうような感じですが、新しいタイトルも名言ですね。これからもブログ楽しみにしています!
  • 2010/04/14
  • toriko
  • URL
Re: No title
そうなんです!気付きましたね!ふふふ。続き頑張って書きますね。
「押して、押して、押し倒されろ!」のタイトルは、変えたあとに意外と好評だったことがわかって、驚きました。でもずっと前からこの時期がきたら変えようと思ってたんですよ。torikoさんもBlogつくってみてはいかがですか?読んでみたいです。
  • 2010/04/15
  • ゆう
  • URL
No title
Blogね、じつはつくってみようかなって考え中なんです。
もし始めたらそのときはぜひ読んで下さいね。
  • 2010/04/16
  • toriko
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