感謝祭の思い出

サンクス・ギビングは、家族がいない者にはつまらない休日だ。皆実家に帰り、ターキーを食べる。家族がいない者は空っぽになった都会に取り残される。盛り場にいっても、何故か虚しい。

だが、友人の中にはこのシーズンにディナーパーティを開いてくれる親切な人間もいる。今年は昨年に引き続き、Rinaが、プレ・サンクスギビング・ディナーに招待してくれたので、行くことにした。
ドアを開ける。革ジャンとジーンズの女の子たちがいっせいにこちらをみる。革ジャン率高すぎる。なんなんだ、このパーティは。ドレスコードが革ジャンなのか?私も革ジャン着てこようと思ったんだけど出かけに見当たらなかったから、ダウンジャケットにしたんだけど、レズってマジで革ジャン好きだよなw なぜ同じセクシャリティを持ってるってだけで、ファッションまで似てきてしまうんだろ。ウケる。知らない顔もいっぱい。私が前デートしてたVivian、それに何人かの子は知ってるけど他の子はほぼ知らない。これがハウスパーティの醍醐味。久しぶりの子と会い、新しい友達を作る。だが、シャイな自分は少し、顔をこわばらせながら、手土産をキッチンのバーに置き、自分の飲みものと食べ物を選ぶ。ホストのRina が、知らない子に紹介してくれる。

「ゆう、紹介するね。こちら、Joyce。Joyce、こちらゆう」
「どうも。“Uターン”のゆうです。もしくはユートピアのゆうね!」
「わは。覚えやすい。よろしく。私はJoyce」

握手をしながら何かひっかかるものを感じた。じょいす?…ってどこかで聞いたことがある名前。顔はヒスパニックっぽいけど、多分フィリピーノだろう。結構タイプだ。頭の中で必死で考えながら、「あ、日本酒持ってきたからよかったら飲む?…あっ日本酒じゃなかったワイン」と笑う。

「え?ヌーヴォー?超嬉しい!サンクス・ギビングといえば、ヌーヴォーだよね!どこで買ったの?私の彼女が買おうとしてすっごい店回ったのにどこでも買えなかったんだよ!」

既に酔っ払っているらしいJoyceが、口を歪めながら「私の彼女」と言うその発音が引き金となって、脳内に火花が散った。

そうだJoyce!
彼女がいるJoyce!!

Joyceとは去年のクリスマスのあたりに知り合った。
Silverlakeのakbarで。

やっと思い出した。

★ ★ ★

去年のクリスマス。友達の家でクリスマスのディナーをして、グロテスクなポルノを見てもりあがった後の二次会。いろんな子たちをakbarに呼んでパーティした。私は、当時デートしていたTinaをそこに呼んでいたのに、土壇場になって「Lilyが帰ってきちゃったのでいけない!」なんていう連絡を受け、意気消沈してた。LilyはTinaの「一応別れてはいる」元カノだったけど、彼女は絶対に別れたくないと主張し、二人はまだ同居していた。Tinaは私と遊んでいることはLilyに内緒にしていたので、彼女に「バレそうになる」と、平気で私との約束はキャンセルされたのだった。

落ち込んでることを友達には知られたくなかった。けど、かなり自棄な感じになってて、酔っ払いたかった。その二次会の会場であるakbarに、私はRinaカップルを呼んでいて、彼らがJoyceをつれてきたのだ。

一目見て、すぐにかわいいなと思った。

けど、Rinaの彼女が、「あの子、Rinaの元カノなんだよ。よく二人で飲んでるけど、私は初めて会った」というので、ちょっと萎えた。なんだ、Rina の元カノかぁ!私は友達の元カノとか、元カノの友達とか、そういうすでにつながりがある子に手を出すのは好きではない。友達の「おさがり」をもらうようなのは嫌なのだ。でもそのJoyceはかわいかった。Rinaたちがフロアにいる時、飲み物を取りにいった私たちはうまいこと二人きりになった。バーカウンターの前で飲み物を待ちながら会話した。

「…。どこに住んでるの?」
「イーグルロック」

イーグルロックは、LAダウンタウンの北東にある小さい街で、オバマが通ったオキシデンタル・カレッジが近くにある。確かLの世界でPapiが住んでたはずだ。

「へぇ…。今私、あそこにいるあの子と(といって私は自分の友達を指さした)一緒に住もうと思って住む部屋を探してるんだけど、もしかして、ご近所さんになるかもね」
「本当?じゃあ、ご近所さんへようこその祝福をしないとね。ようこそ、イーグルロックへ」

彼女は私にテキーラのショットを買うと言い張った。私はテキーラはあまり好きではない。でもPetronなら飲める。私たちは涙目でライムをかじった。

「…イーグルロックっていいエリア?」
「いい。好きよ。…私はあなたのガイドになってあげられる。いい店を教えてあげようか?」
「うん。ご飯食べようよ」

★ ★ ★

この頃、Tinaが「別れようとしてる恋人」だか「別れたけどまだ同居してる元カノ」だかよくわからないけど、Lilyとなかなか別れられないことに業を煮やしていた。「別れる」「別れたい」「もう別れた」と言いながら、ずーっと別れない彼女を待つのに疲れていた。いい出会いがあればそっちにいきたいなって思っていた。当時のTwitterを見るとこんな感じだ。


Tinaが朝からメールしてくる。嬉しいのだが、「…で、お前昨日の話し合いとやらはどうなったんだ?」と問い詰めたい気分でいっぱい。
posted at 01:52:46




ま、一人に絞らずいろいろデートしていくのが良さそう。今は。Tinaの問題が解決したとしても、どうせリバウンドでデートしてもうまくいかないと思うし。Joyceもそうだけど「元カノ」と友達なのは結構だが、そこが仲良すぎるのは問題。Dramaの元。
posted at 01:54:39



…というアタシも結構近くに元デート相手とか元カノがいるタイプなので、それを相手に知られたら「なぁーんだ、自分だって過去のしがらみを引きずってるじゃん」といわれそうだがorz でも少なくとも、彼女たちは今のアタシのデート生活に表立って嫉妬したり邪魔したりしない。
posted at 01:55:41



それに自分も自分の話を隠そうとは思わない(まあ何でもかんでも言うわけじゃないけど…。多分私は友達に対してより、ついったーに一番こういう愚痴を書いてる。WeHoは狭いし皆繋がってるからいろんなこと下手に言えない)
posted at 01:56:47



ぶっちゃけアタシはデート相手が他の子とデートしてたりしててもいいの。ただ、それが元カノで、その子に気を使うせいであたしが隠れなきゃいけないとか、そういうのは嫌なのね!!その子にバレそうになったから今日は中止!とかそういうのありえないでしょ。そういうのに巻き込まないでほしいの!
posted at 02:00:11



JoyceがDrama Free な子であることを願うわ…あ、あとDrug/Disease freeの方もよろしくお願いしたいわ…!かなりdrinkerではあるっぽいけど…。
posted at 02:01:56



Joyce は、Rinaの元カノっていうのがずっと、なんとなく引っかかってた。RinaとJoyceは別れたあとも仲良くて、よく一緒に飲んだりしてたのだが、私はそういう「元カノと仲いい女の子」にはかなり懐疑的だったんだわ。Drama freeであってほしいというのは、Drama=揉め事がない子であってほしいということ。

そんなこんなで次の日。

私は早速Joyceに電話した。

「はーい」
「やっほー。元気?」

前日ノリノリだったハズのJoyceの声はテンション低くて、何か別人みたいだった。

きっと、二日酔いのせいだろう、と思った。

私たちは、しばらくお互いの生まれた場所や、学校で何を習ったのかについて語り合った。いつゲイであることに気づいたのか?とか。 いつアメリカに来たのか?家族にはカムアウトしてるのか?おなじみの話題だ。そして話題はとうとう恋愛の話になった。私は尋ねた。

「それで、あなたはどれくらいの間、彼女いないの?」

彼女は一瞬絶句した。

「…私、彼女いないって言った?」

今度は私が絶句する番だった。

「彼女いるんだ」

「…いる…でも、私たちは何か最近、うまくいってなくてね…。マンネリっていうのかな…。このままつきあい続けて良いのかどうかわからないんだ…だから…」

私は首を振った。

まじかよ。

嘘だろ。

おいおい…。

なんで、皆、「マンネリ化した彼女」がいるんだよう!

私は、もう、自分が「浮気相手」みたいなポジションになる恋にはほとほとあきれはてていたし、倦怠期のカップルの愚痴の聞き役にはなりたくなかった。今すぐに電話を切りたいという思いと闘いながら言葉を絞りだした。

「じゃあ…多分…私たちは友達になれるね」
「そう。友達になりましょ。あなたが年末年始の旅行から帰ってきたら…連絡してね」

そして私は電話を切り、二度と彼女には連絡をとらなかった。

私は「彼女つき」の女の子を好きになってちょっかいを出すことが、この狭いコミュニティで致命的であることを理解していたし、それに、同じ「わけあり」だったら、すでに何度かデートしていたTinaの方がずっと好きだったからだ。

★ ★ ★

私は持ってきたワインを皆のグラスに注いだ。Joyceは、まるで、私と初めて会ったように振舞っている。私もだ。普通だったら「あれ、前会ったことあるよね?」となるはずなのに、何か照れくさくて、そうできない。でも彼女も私のことを思い出していることが私には分かったし、彼女も私が思い出したことに気づいたことを私は知っていた。二人は下手な芝居を続ける大根役者。Joyceの隣に、少し年上に見える落ち着いた子が歩み寄る。少し年がはなれているようだ。これが、その、Joyceの彼女だったのか。それとも新しくつきあい始めたのだろうか?私が聞けないでいる質問を、誰かがいとも簡単に言う。「二人はどれくらい付き合ってるの?」Joyceの彼女は照れくさそうに、でも誇らしげに伝える。「4年間。でもね、私たちは何十年も知り合いなの。幼なじみで5歳から知り合いだったのよ」Joyceは肩をすくめて「そう。クレージーだよね」とつぶやく。彼女の目はもう酔いで血走り、涙ぐんでいる。うん、クレージーだね。

私は苦笑いしながら、キッチンを離れ、Vivianが座っているソファに腰掛けた。Vivianはいつ会っても礼儀正しくニコニコしてる。そして、ゆっくりと話す。ディス・イズ・ア・ペン、そんな感じ。

「久しぶり。元気だった?」
「うん。まぁね…。参ったよ」
「どうしたの?」
「や、大したことじゃないんだけどね」

私は新しい子たちに話しかける気力をすっかり失って、Vivianと話し込み続けた。考えてみれば、全く新しい誰かと一から知り合うより、すっかりお互いを知って、気楽につきあえる『元カノ』と仲良くしてる方がよっぽど楽だ。そりゃそうだね。そりゃそうだよ。私はなんだかとっても納得した。
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