記憶

君は私に理解できない言葉をつぶやき続ける。

君は私の見えないものが見え、
この世の者ではない何かと言葉を交わすことができるようだった。

一心に話し続ける君を私が見つめて、視線を合わそうとしても、
君は虚空を見つめながら薄く微笑むばかり。

静かに満ち足りている表情を浮かべる君の側で
私は眉をしかめた。
焦りと無力感だけが大きくなっていった。

誰と何を話しているの?

「          」

その響きは不可解だが、どこか聞き覚えがあった。

あ。

かつて私もその言葉を理解し、使っていたのだ。

思い出した。

君の見ているものを私も見ることができた。
君の話す言葉を私も話すことができた。







あの頃。








君の頬に触れる。
唇をなぞる。

君はまるで気づいていない様子で、一心に何かをつぶやき続ける。

「          」


私はうなずいて、君から離れた。
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comment

記憶
すごく心に響きます。うまく言葉では表現出来ないのですが、響きます。
何度も読み返させて頂きました。
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