映画『キッズ・オールライト』感想

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『キッズ・オールライト』この前観ました。

感想はTwitterの方でぼちぼち書いたのですが、ブログにもあげておこうと思います。(ネタバレを含みますので未見の方は注意!)
★なかなか観られなかった理由

まず、この映画、アメリカでは1年くらい前に公開されていて、ビデオもかなり前に手に入れていたのですが、ずーっと観ることができませんでした。【結婚して子どもを育てているレズビアンカップルの片方が、精子提供者の男と浮気する】っていうプロットがどうしても受け入れられるものではなかったからです。

世の中でレズビアンが映画に出てくると、いっつも犯罪者だったり、精神に問題を抱えてたり、思春期の揺れ動く「気の迷い」的な感じだったり、することがおおいと感じていて。あげくのはてに、やっとそうじゃないのがでてきて、同性婚して子どもを育てて幸せで…っていうのがでてきたとおもったら、どうしてよりによって男として気持ちよがるっていう描写じゃなきゃいけないんですか?はっきりいって、そういうの全部うんざりだったんですよね。

「そんなレズいないってw」というつもりはないです。浮気しちゃうレズビアンはいるだろうし、男とするレズビアンだっているでしょう。犯罪者だって、精神に問題を抱えているレズビアンだっている。でも、レズビアンが取り上げられている映画とかがそんなに多くないっていう時代に、映画とかメディアの中でそーゆー設定ばっかりでてくるのにホントムカツいてたんです。世の中に、サザエさん的なレズものとか、クレヨンしんちゃん的レズビアンカップル物とか、ありとあらゆるタイプのレズビアンを扱ったストーリーがすでにありふれていて、その上で、その中に、犯罪モノとかサイコパスモノ、思春期モノがあるならいいけど、そうじゃないじゃん?

また、レズビアンである監督自身の「この映画は、レズビアンコミュニティウケを狙ったものではなく、はじめからメインストリームの商業的成功を目指して作った」的な発言を読んだせいもあって、あまりサポートしようという気分になれなくて。

メインストリームでの商業的な成功をしようと思えば、もちろん「ガチガチのレズビアンだったはずの女を自分ので気持よくしちゃう」みたいのは、男にとってたまらなく魅力的な設定なわけです(おえっ!)。そして実際その映画は、とっくにアカデミー賞などで注目されて、初めから狙っていた商業的な成功は手にいれてるでしょ、って思ったから。

というわけで、全然観る気になれなかったんです。

でも、最近日本で公開されて、日本語でプロモーションがされているのをみているうちに、だんだん気になってきて、とうとう観ました!

そしたら、そんなに「おえっ」ってならずに見れちゃったんだな。

★軽いラブコメ!(たまたまレズ)って感じ

ぶっちゃけ私の人生の中で、大好きな映画5本にはいる!とかそういうタイプの映画ではまったくないのですが、普通に軽い感じで楽しめる映画でした。各種レビューでも指摘されている通り、レズビアンカップルということをのぞけば、本当に「普通」の家族のお話なんですよね。だから、そこが物足りないっていう人もいるだろうけど、私はそこは別によいと思った。こうやって、軽いトーンで、さりげなく「同性カップルに育てられた家族の物語」を取り上げたからこそ、多くの人に問題提起できるってのは大きいと思ったし。この映画はストーリーがどういうっていうよりも、「こういう家族の形」を多くの人の目に触れさせた、っていうところに一番の意義があるんじゃないかな?

私がずっと引っかかっていた「なんでそこでドナーの男と浮気なわけ?」っていうのも、意外と説得力ある感じで描かれていたので、そんなに違和感は感じなかった。もちろん、上でねちねちと書いた文句みたいな気持ちが消えたわけではまったくない。まあそういう文句を念頭に置きながら見たからこそ、「覚悟していたほど悪くなかった」のかもしれない。

それより、私が一番この映画で考えさせられてしまったのは、実はレズビアンカップルの愛情でも、親の絆でもなく、「チャラ男、ポール」のその後だったのだ。

★にやけてるけど、なんか可愛らしいポール

この映画で浮気相手となる精子提供者のポールは、年齢こそオッサンなのだが、どこか子どもっぽく、ニヤニヤしてるんだけど、人懐っこくて憎めないキャラ。大学を途中でやめて、好きなことをして生きてきたっていうタイプ。自分のオーガニックレストランを持つなどそれなりに成功してきてはいるけど、ギラギラした社長タイプではなくて、バイクに乗ったり、自分で農園で働いたり…ちょっとヒッピーみたいで面白いんだ。確か50歳くらいなんだけど、それまで、特定の誰かとちゃんとつきあったり家族を持ったりすることなく、それなりに周りの女の子と楽しくやってきたって感じ。

そんでですね。

私は実はこの映画の中で一番親近感…っていうか魅力を覚えたのが、このポールだったんです(汗)

実際に、映画の中でも、二人の子どもはこのポールの自由でリラックスしたキャラクターになつきますし、ジュールズは、浮気までするわけですから、このキャラクターがある程度魅力的に描けていないと、話が成立しないわけですけどね。彼を「気持ち悪いレズ萌え男」じゃなく、そこそこチャーミングなキャラとして描けたというのは、「初めはありえないだろ!」と思えたこのプロットが、「意外と変じゃなかった」理由の一つだと思います。

レズビアンカップルの片方であるニックは、医者で厳格なタイプ(『デスパレートな妻たち』でいうと、ブリー…ってわからんか。『Lの世界』でいうなら、ベットかな?)そして、もう片方は、昔はキャリアがあったけど子育ての為に主婦になって、最近少し不満を感じている(『Lの世界』でいうとティナかな…)。

私は結婚してうん十年!みたいなこのカップルの、どちらにもあまり感情移入できなかったのです。

私自身、どっちかというと、長くつきあうおしどりカップルというよりは、シングルの立場でいることが多かったので。ついでにいうとそういう長くつきあってるカップルの倦怠期のスパイスアップに使われる「刺激剤」的な浮気相手の立場になってしまうことも多かった気がして。だからカップルよりも、その浮気相手の方に注目してしまったんです。

★アリとキリギリス

今までずっと、「気ままな独身」だったポールは、ジュールズに対してだんだん本気になってきて、家族がほしいと考えるようになり、二人の関係が皆にバレた時に「一緒に家族を作ろう」的なことを口走ります。

ジュールズにはそんなつもりは全くなく、自分が愛しているのは長年連れ添ったニックだといい、ニックも「これは私が築き上げた私の家族。家族が欲しいなら、自分で作りな!」的なセリフを投げつけて、ポールは失意のうちに立ち去ります。

確かに、ニックのいうことは正論。ニックたちは、早くから人生のパートナーを探して、一緒に子育てするなど「家族」を築きあげる努力をしてきた。その間ずっと遊び暮らしてきたポールが後からはいってきて「家族」にはいろうとしても、そんな甘いこと、許されないのです。私には、このシーンが、まるで、勤勉なアリが怠惰なキリギリスに一矢報いるイソップ童話『アリとキリギリス』のように何かの教訓を語っているように感じられてしまいました。

ジュールズとニックのカップル、そして二人の子どもは、危機を乗り越えて、家族の絆を確かめ合います。めでたしめでたしって的な感じでラストシーンになるのですが、私はこのポールがこの後どうなったのかがとっても気になりました。

ポールと彼らはもう連絡をとることはないんだろうか?
そして、ポールは、これから先自分の「家族」を作ることができるんだろうか?

映画を観終わったあとそんな風に考え込んでしまいました。

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comment

Re: 映画『キッズ・オールライト』感想
まだ見ぬキリギリスさん。なんか、すごい正直というか、いつわりないというか、真情あふるるというか、そんな感想にげらげら笑いながら、うれしくなりました。「覚悟していたほど悪くなかった。」ふふ。「スパイスアップに使われる「刺激的」な浮気相手」。いけますねえ。心にふれるものがあったことをお伝えしたく、書き込みました。
  • 2011/05/18
  • ケイ
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Re: 映画『キッズ・オールライト』感想
最後にニックがポールに対して放つ捨て台詞はもっともだけど、「誰のおかげで子供を産めたんだ」と言いたくなりました。
精子提供者なんて、所詮種馬なんでしょうかねぇ。
彼に対する感謝があまりにも無さ過ぎるように思いました。
  • 2012/02/01
  • 千住 東
  • URL
Re: Re: 映画『キッズ・オールライト』感想
そうですね~。
感謝。どうなんだろ。
rewardって意味では、報酬ははらっていると思いますし、精子提供者に対して、必要以上に感情的になりたくない気持ちはわかる気もします。

> 最後にニックがポールに対して放つ捨て台詞はもっともだけど、「誰のおかげで子供を産めたんだ」と言いたくなりました。
> 精子提供者なんて、所詮種馬なんでしょうかねぇ。
> 彼に対する感謝があまりにも無さ過ぎるように思いました。
  • 2012/03/13
  • イチカワユウ
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