ジョディ・フォスターのカムアウトと「新しい家族」

昨日の夜、ハリウッドの近くのタイタウンのレストランでゲイ仲間と食事をしていました。店内のスクリーンではゴールデン・グローブ賞の授賞式が流れていました。ライブ音楽がウリの店内は賑やかで、じっくりと観る余裕はなかったのですが、翌日、そこでジョディ・フォスターがカムアウトしていたことを知りました。スピーチの中で印象に残った部分を勉強のために訳してみました。


今日は、告白しようという気分で今ここに立っています。今まで公には言ったことがなかったことを言ってしまいたいという衝動にかられているんです。この宣言は少し緊張しますね。広報係のジェニファーの方がもっと緊張しているでしょうけど(笑)でも言いますよ。大声で、そして誇りを持って。でしょう?だから応援してくださいね。

私は……独身です(笑)そうなんです。私、独身です。冗談、いや、冗談ではありません。でも半分冗談です。盛り上げてくれてありがとうございます。…何か、ひゅーひゅー!とか、ないんですか?ちょっと盛り上げてくれませんか?

(歓声)

今日ここで皆様が大仰な「カムアウト宣言」みたいなものを期待していないことを望みます。なぜなら私はとっくの昔に、それこそ石器時代から(笑)カムアウトしていたからです。私がまだ傷つきやすい少女だったあの大昔から、信頼出来る友達や家族、同僚、そして徐々に彼女に直接会った人たちにも言ってきました。でもご存知のように今は「有名人は個人的な生活について記者会見を開き、リアリティ番組のようにすることを期待されている」と言われる時代。こういうと驚かれるかも知れませんが、私は『ハニーブーブー(※スター子役を目指す子どもを取り上げた人気リアリティ番組)』みたいな子どもではありませんでした。すみませがそれは私ではないのです。今まで(リアリティ番組で個人生活を切りうりして人気を出すような)そういうタイプだったことはありませんし、これからもそうなることはないと思います。でも、泣かないでください。私のリアリティ番組なんて、きっとものすごくつまらないものになると思います。テレビで放映を続けるためには、マリオン・コティヤール(※フランスの女優)といちゃいちゃしたり、ダニエル・クレイグのお尻を叩いたりしなければいけなくなるんでしょうね。もしもそれでもいいというなら、悪くない仕事だと思いますが。

真面目な話、もしあなたが子どもの頃から有名人で、リアルで誠実で普通だと感じる生活のために戦わなければいけないような生活を送ってきたならば、あなたも「プライバシー」が何にもまして重要だと感じるかもしれませんね。プライバシー。

将来、人々は昔を振り返って、それがどんなによい時代だったかを思い出すでしょう。私は三歳の時からプライバシーという点では全てを諦めてきました。これって充分にリアリティー番組っぽいですよね?長い芸歴の中で心が傷つかないようにする秘訣というのはいくつかあります。まずは、誰かを愛し、彼らの側にいることです。

(エージェントや共演者たちへの謝辞)

そして、私が心から愛する人への感謝なしにはここに立つことはできません。私の素晴らしい子育てのパートナーであり、かつてのパートナーであり、人徳のあるソウル・シスターであり、私の告白を聞いて許しを与えてくれる人であり、スキー仲間であり、アドバイザーであり、20年来の愛する親友のシドニー・バーナード。ありがとうシド。私はこの「新しい家族」をとても誇りに思っています。

(息子たちと母親への謝辞)


力つきたために、抜粋の訳で申し訳ありません(こちらでスピーチの全文が読めますので、ご興味のある方はどうぞ)。

まずこのスピーチを読む上で大事なのは、ジョディ・フォスターのセレブとしての芸歴の長さ。彼女は三才の時からコマーシャルに出演し、十三歳でロバート・デ・ニーロと共演しスコセッシが監督した『タクシードライバー』で人気者になりました。彼女の人生において公私を分けることやプライバシーというのはとても重要なことだったのだと思います。

もう一つ、重要なのは彼女は常に自分のセクシャリティについて「語りもしていなかったが隠してもいなかった」ということ。「美しいシドニー」発言もそうですしね。彼女が告白しようがしまいが、彼女が女性のパートナーと子どもを育てたり、破局して新恋人を作ったりしているのは既に有名な話でした。だから、今回のカムアウトの真の意味は、皆が知らなかった事実を初めて公表したことにはありません。

今回のジョディの感情のこもったスピーチを見て、自分の中に勇気と喜びがこみあげてくるのと同時に少し申し訳なさも感じていました。人のセクシャリティが公の場でやたらと取りざたされる傾向はあまり好きではないからです。今回のスピーチのみならず以前からプライバシーの重要さを強調してきた彼女は、本当はこんな「告白」はしたくなかったのだと思います。

glassClosetCover.jpg


ゲイ雑誌の『OUT』がもっとも影響力のあるゲイ&レズビアン特集でジョディ・フォスターとアンダーソン・クーパーのお面を表紙にし「ガラスのクローゼット」と書いたのは二〇〇七年のことでした。

去年(二〇一二年)にクーパーは正式にカムアウトし、今回フォスターもそれに続きました。

時代は確実に変わっていて、これからも変わり続けるでしょう。有名人のセクシャリティが今後も重要なメディアの関心ごとでありつづけるとは思いませんし、そこは変わって欲しいと思います。しかしその変化を起こすためには、私たちの絶え間ない努力が必要です。

「ガラスのXX」という言い回しはよくありますが、いくら「透明」であっても、いやそれが「透明」だからこそ、そこに存在するクローゼットを壊し続けることは大事です。

もしも全てのクローゼットが存在しなくなったとしたら「わざわざカムアウト=クローゼットから出ていかなければならなかったこと」は笑い話になるでしょう。しかし、そうでない世界においては、透明なクローゼットを壊してその外に出ていくことに、大きな意味があるのです。

あともう一つ、彼女のスピーチの中で印象的だったのが、シンディに向けての言葉です。彼女が「ex」という言葉を使っていることからわかるように、二人のロマンティックな関係は数年前に終わっています。しかし、恋愛関係が終わっても、彼らは子どもを育て、一緒にスキーをしたり、相談をしたり……「親友」と呼べるような関係を築いているということがこのスピーチから感じ取れます。

ジョディが「新しい家族」と呼んだもの。それは単に彼らが「ママが二人」いる家庭だから、というだけではないのだと思います。

私は恋愛感情や性愛で結ばれた排他的な「パートナーシップ」やその延長としての「家族」概念をあまり信じていません。しかし、恋愛が終わった後もこうして何かを一緒にやっていき、支えあえるような関係はとてもリアルだと思います。そんな関係を実践しているジョディの言葉に希望を感じました。もちろん実際にはいろいろ大変なこともあるとは思いますが、彼女の幸せそうな笑顔を見ていたら、自分も嬉しくなって涙がこぼれそうになりました。

ジョディ、おめでとう。
そしてありがとう。
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