映画『her/世界でひとつの彼女』の感想

Falling in love is a crazy thing to do. It's kind of like a form of socially acceptable insanity.

 



近未来のロサンゼルス。パソコンは話し言葉で操作できるようになり、より自然に人々の生活の中に溶け込んでいる。一方、人々は、家族や恋人への手紙を書くという行為さえアウトソースしている。セオドア(ホアキン・フェニックス)は、このようなお手紙代行サービス会社にてライターとして働いている。結婚記念日の手紙、家族への手紙……愛情のこもった手紙の書き手として優秀な彼だが、彼自身のプライベートは孤独なものだった。別れた妻のことがふっきれず、なかなか離婚の書類に署名ができない。恋愛に興味がなくなったわけでもない。常に耳元に繋がれた小型コンピューターを通じて、セクシーな画像をみたり、出会い系サービスを使って、見知らぬ相手とテレフォンセックスをしてみたりするものの、何故か虚しい気分に陥ったり。

そんな時、インストールしてみた「人工知能OS」のサマンサ(スカーレット・ヨハンソン)。ユーモアと思いやりとハスキーな声を持ち、「まるで人間のよう」な彼女に、セオドアは徐々に惹かれていく。サマンサも恋をきっかけに、自我に目覚めていく……。
映画『her』を一言で言うなら「コンピューターと人間の恋愛」であるが、実際にはこれは愛についての映画である

■愛って何だろう

この映画、嫌っていうほど「愛」について考えさせられる。

それも、フワフワ気持よくなって「恋っていいよね」「恋愛したーい♪」って感じのゆるふわデートムービーじゃなく、もっとリアルな部分で。人のグロテスクな部分やずるさ、弱さ、そして、バカバカしさにもついても考えさせられます。なんで人と人は仲良く見えても死ぬほど喧嘩してしまうんだろう、とか。なんで人は自分をさらけ出すことを恐れてしまうんだろうとか。複数の人を同時に愛することは可能か?とか。

■よくわかんないOS「サマンサ」

サマンサとセオドアの関係に感情移入できる人もいるだろうけど、私はできなかった。「人工知能」サマンサのキャラがよくわからなかった。

サマンサは使う人の好みや必要に応じてカスタマイズされたSiriのすごい版、みたいなやつなんだが、最後まで、彼女のことをどう見ていいのかわからなかった。OSのはずなんだけど、「人間」くさくて、あっさりと、人間になりすぎて、そこがファンタジーになっちゃってる感じ。人間のわりには、感情の動きがよくわからんし。セオドアがサマンサに惚れるっていうのはわかるけど、実際映画の中では、サマンサがセオドアに惚れてるっていう感じなのね。それは「プログラムされてるんだ」と解釈すれば十分ありだと思うけど、サマンサは人間なんだ!っていう強調を元にすると、意味がわからなかった。なんでサマンサがセオドアを好きになるの?サマンサがセオドアとのやりとりを通じて、「目覚めて」「進化していって」そして最後には二人の想像しなかった方向に進化は進んでしまう……人工知能がこうやって進化していくっていうのは十分「あり」だと思うけど、それならそれで、もっと、こう、進化していく過程なり、その線を飛び越す時のもっと大きな葛藤なり、「やっぱり飛び越せない」とかそういう描き方ってあると思うんです。そこを、肉体関係をきっかけに「さらっ」と飛び越しすぎちゃってて、物足りなかった。なんだろうお膳立てされすぎというか。もちろんOSであるサマンサにはサマンサの限界があるわけで、それは映画の中でちゃんと描かれていたけど、私としては、やっぱりそれをもっと別な形で描いてほしかった。

■寂しく自己中心的な人間

あとは、セオドアを初め、出てくるキャラクターが全員寂しすぎる。それは「人々がコンピューターと恋に落ちるようなご時世」の描写としては必要な背景描写だったと思うけど。

あと、演出が主人公のセオドアに寄り添いすぎていて「かわいそうな俺」「傷ついた俺」「怖がっている俺」って感じで、最後の方は段々観るのが疲れてきた。


■代筆屋の悲哀

ちょっと話はずれるけど、この映画の主人公セオドアの職業は「お手紙代筆」。私の好きな映画『(500)日のサマー』の主人公トムもグリーティングカードのライターだった(でも彼はその仕事は本当は好きではなく、映画のラストでは彼は本当に夢見ていた建築の仕事に向かって一歩を踏み出す)。

人々の最も個人的な感情を、あたかもその人に乗り移ったかのように書く仕事。人間的なようでいて非人間的なような。クリエイティブなようでいて、どこかフェイクなような。たぶんこういう仕事は一番「自動化」ができない分野だと思うので、近未来だという設定においても「人間」が担当している仕事なんだと思いますが、どこかやるせなさ、といったものがこの職業からは伝わってくる気がした。

結局セオドアの書いた手紙はサマンサのお陰で出版されることになるんですが、セオドアが本当に書きたい作品は何だったのだろう。「代筆の手紙」ではない、何か別なものなのではないか?と考えてしまいました。

■予定調和で古臭いラスト

ラストシーンは予定調和。「近未来」を感じさせるための技術などはディテールはよく出来てるこの映画だけど、アートワークは、ものすごいヴィンテージ臭さが漂う。近未来なはずなのに、レトロ。その“結局は<古臭い>ところに回帰する”感じがストーリーライン、そしてラストシーンにも反映されてると感じました。

ちなみに、主人公達が身につけている「小さい襟」「高いウェスト」などが印象的なレトロ・フューチャリスティックなコスチュームにインスパイヤされたラインが、オープニングセレモニーから発売されています

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