香水物語

好きな香水は?と聞かれた時は、よくありがちな無難なものを答える。今一番気に入ってて、本当にリアルタイムで愛用している香水の名前は言わない。香水は誰にでも真似できてしまうから。組み合わせでバリエーションが作れる洋服や小物とは違う。何百何千とある香水の中で、ありふれた香りは使いたくない。誰も知らない私だけの香りを使いたい。

★ ★ ★ ★

香水はいつも複数のものを使っている。

・仕事の時の香り
・遊びに行く時の香り
・女らしくなりたい時の香り
・かっこ良く決めたい時の香り

「いつも1つの香りをつけていると、鼻が麻痺し、その香りに対して鈍感になってしまう」といつか誰かが言っているのを聞いたから。

朝着替えて、出かける直前に香水の瓶の前で選ぶ。
私はコスメや香水にお金を使う方ではないので、せいぜい4つか5つの選択肢しかないのだが、ボトルの色やデザインを眺めながら何をつけようか迷うのは楽しい一瞬だ。

ー今日は何にしようかな。

一瞬迷って、大抵はその時に一番気に入っている香水を毎回選ぶことになるのだ。
ここ半年くらい、ずっと、その香水をつけることが一番多い。

ただ、彼女に会う時だけは、その香水をつけないようにしている。
それは昔、彼女が使っている香水が気に入って、自分も買ってしまったことを今でもなぜだか言い出せずにいるから。

「あなた、私の香りを盗んだでしょ…」

彼女は冗談っぽく、でも少しだけ本気の嫌悪感をにじませた笑いを浮かべるだろう。

そして、私が初めてボトルの封をあけ、胸一杯に香りを吸い込んだ時、彼女のことを思い出さなかったといえば嘘になるのだから…やはり私は彼女の目線を受け止めることができない。

それは多分友達同士としてはやりすぎになってしまう行為なんだと思う。

たまたま同じ香水を使っているなら、問題ない。
でも新しく誰かと同じ香水を買う行為は、少しやりすぎ。

★ ★ ★ ★

音楽の好みが年を取るごとに変わって来るのと同様、香りの好みも自然と変わってくる。自分でつけたい香りの好みも、相手につけてほしい香りの好みも変わって来る。

もしも、昔別れた女と何年ぶりかに再会して、彼女が昔と同じ香りをつけていたら…。

ーまだあの頃と同じ香りを使っているの?

私は懐かしさでいっぱいになり、彼女を抱きしめたくなるかもしれない。

しかし、同時に、未だに新しい香りを知らない彼女に対して、別れてよかったと安堵するかもしれない。

もしも、彼女が、昔とは全然違う、そして魅惑的な香りをつけていたら…。

ーどうやってこんな素敵な香りを見つけたの?

私はその香りを最大限に味わおうとして、彼女の髪に顔を埋めるかもしれない。そして、すっかり変わってしまった彼女を実感して甘酸っぱい痛みを感じるかもしれない。

★ ★ ★ ★

ありがちじゃない香水を見つけるのは大変だ。
それには努力が必要だから。
有名じゃないけど、素敵な香水。
それを見つけることは、難しい。

それは、まるで、広いこの世界の中で、セクシーで、頭が良くて、優しくて、シングルで、趣味が合う女の子を見つけるみたいに難しい。

だからそれを見つけたらすぐにすぐに手に入れよう。
女の子と違って、香水はお金さえ払えば手に入れることができるんだから。


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Photographer
Simon Pais-Thomas
License
Creative Commons (by-nc-nd)
Tool for photo selecting
Gigazinize Tools - Image
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comment

Re: 香水物語
ゆうさん、この文章、このまま香水の広告に使えそう!すごくステキ!自分に似合いの香水探さなきゃ!って気になりましたw

若い頃それこそ外国でお気に入りの香水に出会って、日本では売ってなかったので、自分だけの香りって気がして気に入ってずっと使ってたけど、さすがに年齢に合わなくなってきてしまったので、本当、自分の香りを探したいです。
  • 2008/05/14
  • おと
  • URL
やっほ。
ありがとー!
嬉しいです。

お気に入りの香水って香水売り場で探してるだけじゃなかなか見つからないよね。結構人がつけててはじめて「くさい」とか「いいにおい」とか感じるの。でもそれじゃ真似になっちゃうから。悩み。

おとちゃんのにおい、見つかるといいですね。
今度会う時はつけてきてね♪
  • 2008/05/14
  • ゆう
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